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239、坂道と戦う

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239、坂道と戦う

第66回富士登山競争・五合目コース
 
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朝。目覚めは5:30。
ほんの少しの頭痛。しかし、数分後に消え去る。
窓から空を見ると、雲はあるが青空も見える。
そして、昨夜まで見えなかった富士山が見えた。
やっぱり、高い・・・・
...
ベースキャンプのホテルを7:30に出発するため、ホテルでは朝食が準備できないとのこと。
そのかわりおにぎり弁当を準備してくれた。
おにぎり3個に塩鮭、ゆで卵1個、ソーセージ一本。カロリー的には十分だ。
腹を満たして、更に運動中の脂肪燃焼を活発にさせるゼリーを流し込む。
7:30。予約しておいたタクシーに戦闘服を着て乗り込む。
3月25日にエントリーボタンをクリックして4か月
とうとうその瞬間が訪れる。

富士吉田市役所の前にはすでにランナー達が其々の思いでウォーミングアップをしている。
東京マラソンと違い、ランナーの数が少ない。
五合目コースの出場者は事前配布された名簿によると男性1503名。女性202名。合計1705名
ちなみに50歳以上は男女合わせて261名なので、わたしは高齢参加の部類・・・(▼▼)
少ないと何かと都合がよい。
トイレに並んでいても東京マラソンのように長々と並び続けることはない
スタートブロックへの整列もスタートぎりぎりまで結構自由に過ごせる。
わたしはこの時間は日差しもあり、気温も上昇してきたので、建物のひさしの下に腰掛け、涼しむことができた。
それでもスタート3分前にはランナーたちが並ぶ後方に位置し、スタートを待った。

午前9時。スタート。
1分もかからずあっという間に本来のスタートラインを駆け抜ける。
東京マラソンは23分もかかったが・・・・
時間内ゴールは3時間30分がリミット。
富士吉田の街の中、最初の約1kmは平たんな道。
多くの地元の街の人たちが小旗を振りながら選手たちに声援を送る。
平日なので作業着や事務服の人が多く見受けられた。
地元企業の支援もあって成り立つ大会なのだろうと感じた。
最初の曲がり角を90度左折。
まっすぐな登り坂の前に富士山がそびえる。
戦いはここからだ!

街の中を富士山へ向かう登り坂。最終ゴールまで登りだけが続く。
気温も上昇。日差しも強い。体感的には30度以上の暑さ。
準備不足だったこのレース参加。
大会に参加するというモチベーションとアドレナリンの充填を期待したが、思ったより足が重く感じる。
というか、やっぱり登り坂はきついのだ!
登り坂のせいで、前を進むランナーたちとどんどん離れていくのが見える。
更に次から次へと後ろにいたランナーがわたしを追い越していく。
わたしが抜いたのはほとんど皆無の状況だった。
3km付近の最初の給水ポイント・浅間神社まで街の真ん中なので暑さとの戦いだったが、
なかなかエンジンがかからないこの体に鞭打って、ようやく浅間神社の入り口にさしかかった。
そこに沿道の住民がホースで冷たい水をシャワーのようにかけてくれる。気持ちいい!
思わず『ありがとう!気持ちええ!』と声出してしまった。

最初の給水ポイントでコップの水を頭からかぶり、背中にも一杯流し込んだ。
気持ちを入れなおして、木陰の坂道を登り続ける。
まっすぐな直線道路。ほとんど縦長となった。
じわりじわりと私と前のランナーの距離が開き始める。
このころから心拍数がかなり上がっていることを感じ始めた。
いつもトレーニングしている時の心拍数ではない。
4㎞を過ぎたところで、はじめて後ろを振り向いてみた。
まだまだ100人以上のランナーがわたしの後方でもがきまわっていることを確認。
そして開きはじめる前のランナーたちとの距離。
気が付くと後方集団のトップ選手というところか・・・・

わたしの頭の中では5㎞付近の富士五湖道路との立体交差が次の目標だった。
しかし、息は上がるし、心臓の鼓動はかなりのテンポで体全体に血液を送っている。
登り坂は一度止まると、再スタートが難しい。
歩いてしまうと、再びランニング体制にもどれないのは判っていた
『 止まれない 』 『 止まったらおしまい 』 
何度も自分に言い聞かせるが、苦しみのほうが時間の経過とともに大きくなっていく
そのころから、前方のランナーでも歩き始める人がちらほら出てくる
その姿を見たら、ふとあきらめがついた。
そして、このままだと自分自身が潰れてしまうことを予想してしまった。
4.7㎞付近でランニングが止まった。とうとう歩き始めた。
予想以上の苦しい展開となってしまった。

目標は時間内ゴール。
あきらめるわけにはいかない。
この気象条件でゴールできなければ、全くもっての恥さらしだ。
歩くにしても大きく腕を振り、できるだけの早足でゴールを目指した。
そうすると前を走っているランナーもじんわりぬくことができ始めた。
走る格好なのだけれど、スピードが出ていないのだ。
歩くことで心拍も落ち着きを取り戻してきた。
2,3度またランニングしてみるが、200mも行かないうちにまた歩きはじめる。
7.2㎞地点の給水ポイント・中の茶屋。
最悪でもここまで走りたかったのだが、無念の歩きでの通過。

坂道は角度を増して、厳しさだけの苦痛が続く。
コースの道路状況も舗装はしてあるのだが、あちらこちらにくぼみがあり歩きにくい。
それでもとにかく前へ進む。
救いは少しづつ前方のランナーを追い越し始めたこと。
木陰の中の道ということで暑さも和らぎ続けた。
馬もここまでという意味で名づけられた10.8㎞のポイント馬返し。
なんとかたどり着く。
通過時間は1時間40分。
昨年の記録をみると、このタイムは時間内ゴールを目指すためのリミット時間だった。
1時間30分台は殆どの人が時間内ゴールとなっている
40分台はいけるかいけないかの分かれ道。
そしてコースは車道から完全な山道になっていく。
残り時間1時間50分。4.2㎞の壁が待っている。

馬返しの給水ポイントでレモンをかじり、梅干しをほうばる。
この梅干しが塩分を体に与えてくれて、暑さしのぎとなる。
山道だ。早歩きも不可能な状況。
まずは心拍を落とすためスローダウン。
5分ほど歩くと落ち着いて登り続けられた。
それでも被っている帽子のつばの先からはぽたぽたと汗が落ちていく
ここからは救護班も短い間隔で待機している。
『 大丈夫ですか? 』
と声をかけてくれる。
『 4701番。まだ生きてるよ! 』
と答えると
『 冗談言えるからまだいけますね!ガンバッテください! 』
一般登山者もちらほらみかけはじめる。
流石に登山者よりは早く登っている。
2合目の標識。
ほんの少しだが平たんな道が続いた。50m程度だったと記憶する。
その時、すーっと体が軽くなった。
今考えるとなんだったんだろう。
疲労感がなくなり、呼吸も落ち着き、心拍も低下。
まちがえるとこのままスーッと命の灯を落としてしまうのかと錯覚するぐらい。
勿論走ることはできなかったがペースアップは可能だった。
最もきつくなる2合目からとにかく黙々と登り続けた。
途中、幾人ものランナーがぜーぜーと息を切らしながら座り込んでいる。
足がつったようで、一生懸命ふくらはぎをのばしている人もいた。
そういう人が増え始めた。
『 大丈夫ですか? 』
と声をかけると、殆どの人が笑顔を見せてくれる。
一般トレイルランナーが下り坂を駆け下りてくる。
みんなが『 がんばってください!』と声をかけてくれるのもあたたかい。
ぐしょぐしょになった帽子を脱いで、暑さをしのぎながら、なんとか2合5勺の給水ポイントにたどり着いた。
時計は2時間30分を指していた。

給水ポイントでは地元の中学生がボランティア活動の一環としてランナーの世話をしてくれる。
ありがたい。
『 ここでリタイアしても構いません! 』
この言葉はまだ早いだろうと思ったけど・・・・
残り2㎞。間に合いそうな手ごたえを感じた。
3合目の標識を通り過ぎ、4合目を目指す。
ところが登れど登れど4合目の標識が見えない。
かなり登っているはずなのにいつまでたっても辿りつかない。
少し足の疲れも感じ始める。
救護班に出会う。
『 あと1.5㎞です!頑張ってください! 』
かなり登ったはずなのにまだ1.5㎞。時間を確認すると残り約35分。
暗雲が垂れ込める。かなり焦った。
この時点で諦めてもおかしくなかったが、とにかく前へ進むことだけを考えた。
15分程度進んだところで、一般女性トレイルランナーがすれちがいながら声をかけてくれた
『 あと歩いても7,8分です!がんばって! 』
間に合うぞ!間に合うぞ!なんとか間に合うぞ!
山道の終わりは一度車道に出て、少し車道をこなすと、もう一度登山道に。
その山道を過ぎると殆ど平坦なゴールまでの200m。
山道の終わりが見えた。最後に大きな段差を上り詰めなければいけない。
ガードレールに掴まって、体を引き上げて車道に上り詰める。
スタートから続いた登り坂をひたすら上がってきた苦痛の連続の終着点。
しかし、そこではゴールはまだ見えない。
50mほど歩いて視界が広がると、赤いゴールの横断幕が見えた。
時計はまだ3時間18分。
間に合うことは目に見えた。
なんとか間に合った。
ゴールまでの道に前を走るランナーはいなかった。
かなり気持ちがいい。
大勢のランナーたちとゴールするのではなく、こういうシチュエーションもおつなもの。
デジタルの時計表示が刻一刻とすすんでいく。
折角だから3時間10分台のゴールと、フィニッシュの瞬間の写真写りまで考えて、最後のもうひと走り。
ゴールした時間は3時間19分45秒。
残り時間はわずか10分15秒だった。

東京マラソンのゴールよりもうれしさは大きかった。
なぜならば、今回のほうが不安も大きかったし、苦しみも大きかったからだ。
坂道を登るのは本当にきつかった。
早い段階で歩き始めただけに、時間内ゴールという目標が霞んでいた時間も長く感じた。
速報記録をみると男性の時間内完走者は1343名。
わたしは1323位・・・・・・・・・ほんと、滑り込みセーフでした。
このギリギリのタイミングでゴールしたランナーとはなぜかすぐに笑顔の会話となった。
自然に握手を交わし、喜びを分かち合った。
府中から来た女性はご主人が山頂コースに参加していて、自分は初参加だったとのこと。
嬉しくて嬉しくてたまらないという満面の笑顔が印象的だった。

五合目からの帰路は貸切バスが用意されていて、そこまで移動しなければいけない
2㎞近くを疲れた体をすすめていく。
2時間早く山頂を目指した山頂コースのランナーたちが早くも下山してきた。
後で聞くと、トップの選手は山頂まで2時間29分でたどり着いたとのこと。
尊敬するのみです。
それにしても富士山山頂を目指す登山者の多いこと。
その人の多さに圧倒されました
世界遺産に登録されて富士山人気はうなぎのぼり。
一般登山者と競技参加者が一緒になって登山道を登るのはお互いに大変だと思います。
人が多く入ってもいいのですが、自然を汚す行為だけはしてほしくないですね。

ボランティアや中学生、大会運営関係のみなさんありがとうございました。
そして、このレースエントリーにきっかけを作ってくれた友人に感謝します。
苦しいレースでしたが、終わってみれば楽しめたひと時でした

第66回富士登山競争・五合目コース
2013年7月26日金曜日 9:00スタート
馬返し 1時間40分58秒
ゴール 3時間19分45秒

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